新年おめでとうございます。
昨年に引き続き2020年の印刷通販・ネット印刷業界の展望について私的な意見を記します。弊社及び弊社母体会社を含めると話が複雑になるので、一業界人として汎用的な概観について言及します。
用紙値上の大きな影響
2019年の初頭にあった印刷用紙の大幅値上げ(20%)が業界に与えたインパクトは甚大でした。原価の大半を占める用紙価格が大幅に上昇した結果、各社とも販売価格に転嫁せざるを得ませんでした。大手はここで競合下位を振り落とす価格戦略をとるかにみえましたが、さすがにここまでの著しい原価上昇を吸収できる余力はありませんでした。
恩恵より反動の方が遙かに大きい消費税増税
各社とも8%アップのときにあった特需を期待しました。しかし、大きな特需は発生しなかったようです。前回のような、増税直前に各社が受注制限をするほどの需要は発生しませんでした。更に一番の繁忙期である年末も各社とも例年の慌ただしさが感じられませんでした。昨年までは大手の受注制限の情報がSNS上で拡散していましたが、今年は不気味なほど静かでした。これは増税で需要が冷え込んだとしか考えられません。年度末の2020年の3月がどうなるかで、この傾向がより明確になりそうです。
大手2社・準大手2社の寡占化が進行
最大手は年商が300億を突破、二番手も準じた勢いで成長が続いています。昨年の用紙値上げと消費税増税の影響についてはまだ決算が出ていないので不明ですが、業界に身を置いている肌感覚からして寡占化の勢いは増すばかりです。
準大手の二社も堅調
上位二社とは売上に差がありますが、5位以下とも大きな売上の断絶があります。準大手の一つは多ブランド戦略が功を奏して業界でのプレゼンスを上げています。もう一社は堅調な業績に加え、新規参入のファブレス大手と提携することで、勢力を拡大しています。歴史ある某社が事業吸収され統合されたのは業界的に大きな話題でした。
新規参入の激減
5年ぐらい前でも既にネット印刷への新規参入は「手遅れ」でした。ゆえに昨年のタイミングで新たに参入してきた、ある程度以上の規模のある印刷会社は皆無でした。逆に思惑が外れて迷走した挙げ句、撤退した同業他社は散見されました。ときどき新規参入のプレスリリースがありますが、大手4社の別ブランドだったり、大手の生産設備を利用した副次的派生業態がほとんどです。
縮小均衡の2020年代へ
東京オリンピックを境に日本経済の大きな落ち込みが予測されています。右肩上がりだった大手を中心とした印刷通販業界も、今後は縮小均衡時代に入るでしょう。大手4社は規模の拡大によるメリットを最大限受益する手堅い戦略をとるでしょう。5位以下の中堅印刷通販会社は、それぞれの得意分野を精鋭化していく戦略が重要となります。さらに先陣を切った某社のように、大手と提携して受注量を確保する流れも間違いなく加速化していくでしょう。